固定種・在来種とは
野菜の種は、「固定種(在来種)」と「F1種」に大別されます。
固定種とは、いわば「普通の野菜の種」。一番よくできた野菜を選んで種を採り、その種を蒔いて育てた中からまた一番よいものを選んで種を採り、といったことを何代も繰り返して品種改良したものです。長い時間をかけて気候や風土に適応し、その土地にしっかり根づいたものですから、肥料や農薬に頼りすぎずに栽培ができますし、種を採って毎年再生産しつづけられます。昭和30年代頃までは、ほとんどの野菜が固定種でした。
固定種とは
何代も、種を取り、育てていく、といった自然な育種をしていくうちに、自然とその野菜の個性が定着し、固定していったものをいいます。
在来種とは
固定種の一つで、自然な育種をしていくうちに、その風土に合わせて適応していった野菜のことです。
F1種とは
一方、現在の市場で全盛を誇るのは「F1種」。人為的につくられた一代限りの雑種です。別系統の野菜を掛け合わせると、一代目のときだけに現れる雑種強勢によって、野菜の成長が早くなり収穫量も増大。さらに雑種の一代目は両親の優性形質だけが現れるため、形や大きさも揃う。そんな性質を持った、大量生産・大量消費にうってつけの種です。しかし、このF1種が人間の意図した通りの性質を持つのは一代限り。そもそも二代目以降が作られることを想定していません。そのため、農家は毎年、種を買わなければなりませんが、高齢化で人手の少ない農家にとって、仕事を減らし収入を増やす意味で、またとない種になったのです。
何故農家さんはF1を避けられガチな理由
まず、F1種が危険と言われている理由のひとつである「雄性不稔」について説明です。
雄性不稔とは、花粉が作られず種子をつけない性質を持った植物のこと。これは種苗会社などでF1種を作る際にとても都合が良く、実際に大根などさまざまな野菜の交配に利用されている。
この性質をもって、「種子をつけない=自然な状態ではないから危険」という間違った認識で、F1種への誤解が広まってしまっているのが現状だ。
しかしたとえば、海岸などに自生している浜大根と呼ばれる植物は、自家受精ではなく他者からの花粉で種子をつける。多様な遺伝子を残すために雄性不稔の性質を持っていると考えられている。つまり、雄性不稔は自然界で自生する植物にも生じる性質であり、雄性不稔だから危険と語るのはやや言い過ぎな面もあるだろう。
また、自家採取ができないことから、種苗会社から毎年種を購入しなくてはならず、種苗会社に搾取されている、という点もよく指摘される。この点については、品質や収量を安定させるために、長い年月をかけてF1種を開発した種苗会社=育成者にお金を払うのはある意味で当然の話であり、コストをかける代わりに、農家が自分で自家採種を繰り返したり、品種改良する労力も省ける。
それだけでなく、大量生産や均一化により収量や収益アップを求める農家にとっては、固定種よりもF1種の方が向いていると言えるのだ。
ちなみに、種苗会社と言えばF1種のみを扱っていると思われがちだが、実は固定種なども販売している。F1種と固定種、それぞれの特徴や用途によって、多様な種を購入できるようになっている。